茶と季節、そのしつらえを通して茶の湯の基本とさまざまな日本文化との関わりを知り、そして薄茶の点前を習得し茶事を体験します。己月会オリジナルの初心者のためのプログラム「茶楽」。茶道を習いたい方へ |お申込み・お問い合わせ
十月/神無月の茶
十月の呼び名は神無月。かんなづきやかみなしづきとも呼ばれますが、明確な語源がある訳ではなく、神の月を表すとされており、この時期、出雲では、「神在月」として出雲大社などで神在祭などの神事が行われます。
二十四節気(にじゅうしせっき)では、10月8日頃を「寒露(かんろ)」といいます。露が冷気によって凍りそうになるとの意味ですがこれは中国のこと。日本のこの頃は、夜も長くなり、ひんやりとした夜風が清々しい時期。虫の音に耳を傾け、月を愛でるなど季節の移ろいを五感で感じられるのもこの時期の魅力です。
北の国からは紅葉の便りが届きはじめる頃です。
10月23日頃は、「霜降(そうこう)」。露が霜となって降り始めるころの意味。お気づきだと思いますが、先月の白露からこの霜降まで、露の変化を表す名になっています。微かな空気中の水分の変容を感じ、暮らしに活かす先人の知恵には驚かされます。
茶の湯でも、季節の移ろいと共に細かな配慮があります。朝晩、冷気を感じるこの時期は
中置(なかおき)といって、風炉を畳の中央に据えることで火を客人の方に近づけます。
水指(水差し)は客人から離れた勝手付きに運び出します。
客人に、水の冷たさを少しでも感じさせないようにと心を配るのです。
神無月の点前
茶の湯では十月を「名残(なごり」と呼びます。茶壺の茶も残り少なくなり、一年の終わりを惜しむとされています。
名残とは余韻です。目の前の見えることだけにとらわれるのではなく、終わりの後も静かな流れとなって次ぎへと続いていく、次ぎの始まりの予兆を感じ取るということ。
人生は、一つひとつが区切られたものではありません。名残があることで、新たなスタートに向けた「こころの在り方」を伝えているのです。
稽古であっても、一つひとつの点前を丁寧にそして余韻が感じられるようにありたいものです。
十月だけに使う棚に五行棚(ごぎょうだな)という棚があります。
裏千家十一世 玄々斎が好んだ棚で、陰陽五行の木(もく;棚の板)、火(か:炭火)、土(ど:土風炉)、金(ごん:釜)、水(すい:湯)を一つの宇宙として表現した棚です。
陰陽五行とは、中国を起源とする思想で、世界を陰(いん)と陽(よう)で捉える陰陽思想と万物をかたちづくる要素が、木・火・土・金・水であるという五行思想が結びついたもの。
五行棚:安部宗裕先生の茶室にて撮影
茶楽 其ノ七
茶の湯の侘び
エコロジーとしての茶の湯
現代社会ではエコロジーという言葉が一人歩きし、広い意味で使われていますが、生命体である地球や自然の一部としての存在を意識した、またはそれに基づいた経済、生活、文化的思想や活動をさす言葉です。
この視点から茶の湯を捉えてみると、
茶室を構成する茅葺き、土壁、障子や簾(すだれ)越しの自然の光。露地の考え方、四季と生命への尊敬を示す茶花。懐石にみられる質素な一汁三菜の持てなしなど、日本の気候風土、自然を巧みに取り入れ、それを徹底して活かす行為が見えてきます。なによりも茶の湯の侘び、寂びに根ざした精神性こそがエコロジーそのものといえます。
現代社会の在り方として求められている、エコロジカルやサスティナブル(持続可能)の方向性を示すものです。
中国から仏教伝来と共に伝わった茶は、日本固有の気候風土や自然神道、その当時の社会制度、体制の影響を受け、日本化(和化、固有化)され茶の湯となりました。この日本化の鍵となったのが、四季が明確な気候風土と和歌の世界で培われてきた
「侘び」「寂び」という美意識です。
多くの日本人は、虫の音に耳を傾けそれぞれに思いを馳せますが、外国人の中には、ただうるさいものとしか感じない人々も多いようです。この感覚は自然の移ろいを肌で感じ、自然を敬い、人間は自然の一部とするエコロジー思想がそもそも根底にあるからだともといえます。
「侘び、寂び」を代表する心情として、
見渡せば
花も紅葉もなかりけり
浦の苫屋の秋の夕暮れ
という藤原定家の句がありますが、これも日本の湿気の多い気候風土で見るから、殺伐とではなく、しっとりとした何ともいえぬ情緒を感じさせるのではないでしょうか。
「侘び寂び」には、さまざまな解釈がありますが、巡る季節の中で「いのち」が消えそして蘇生する自然のダイナミズムや儚さの一瞬一瞬に美的価値を見出し、自然の恵みに感謝し、その脅威に恐れを感じ人間を超えた力を崇拝する、この表と裏を合わせて美として高めたと推測できます。清貧であるという生活規範を持つ日本固有の美意識ともいえます。この侘び、寂びの美意識とその心を「型」として現代に伝えているのが茶の湯です。
日本の自然を守ることは日本文化を育んでいくことに等しい...。常に自然の営みを感じ、かけがえのない存在として意識することができる茶の湯は、現代社会におけるエコロジーの方向を示すものとして意義深いものと思えてなりません。
十月の稽古
仕舞い
茶席の禅語
吾唯足知(われ ただ たるをしる)
訳なく欲しがらず、必要な分を必要なだけでよい。
千利休は、茶道の心得として「家は漏らぬほど、食事は飢えぬほどにて足る事也」と言ったと伝えられている。
話:茶の湯のわび、さびについて
1.「仕舞う」こととは
2.拝見の心得
3.仕舞いの礼
神無月の茶碗 銘:きざし So-U作
冬への移りの時期、温もりを感じさせてくれる茶碗でどうぞ!
茶碗も厚手で、見込みの深いとっぷりとした茶碗を用います。
己月会主宰:佐藤 宗雄 So-U 2018.10 2021.5追記
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