香合は、点前の時に炉で焚く香の入れ物。5月から10月の風炉の季節には、乾いた香木を用いるため塗り物(漆器)や竹、木をくくった香合が使われる。11月から4月の炉では、湿った練り香を用いるため、陶器や磁器製ものが使われる。
茶の湯では、このように季節によって香も香合も使い分けられるが、これは四季を取り入れた茶の湯のスタイルが明確になった江戸中期頃からといわれている。
季節を問わないものとして、貝の香合や金属製ものもある。
香合は炭点前の時に持ち出すが、炭点前を省略する場合などは、床の間に袱紗や紙釜敷の上に置き飾る。
茶の湯が誕生した頃は、書院茶室の座敷飾りとして
床香爐が用いられており、香合は床香爐と一対で持ち出され、床の間に飾られたようである。
香合は形も大きさもさまざまで、懐に忍ばす小さなものから、平安時代の玩具「
振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)」から転じたぶりぶり香合のような大きなものまである。また、小物入れなどの雑器を香合に見立てて用いることもある。
京都では少し前まで、旦那衆が手のひらに収まる小さな香合に自分の焼香や抹香を入れ、懐や袖に入れて持ち歩いていた。焼香の際の香りで誰なのかまで分かったそうである。私が京都に行くたびにお付き合いしてくださった方もそうであったことを思い出す。粋な話である。祈りと遊びの心を併せ持つ香合は、茶人の感性が強く現れる茶道具のひとつでもある。
香合「種々」は、木のオブジェを制作する現代アートの作家、藤沼氏にアイデアを伝え、樽(たるき)を旋盤でくり抜き、表面を特殊な技法で仕上げていただいたもの。
種々 seeds So-U&F 2010年作 高さ:5.5cm 径;5cm