茶の湯の音

茶のこと、茶の湯のこと茶の湯と音-1

「茶の湯と音」自然の音に意味を感じる日本人の感性と美意識。

サウンド オブ サイレンス(The Sound of Silence:1965)はサイモン&ガーファンクルの曲として有名だが、この「沈黙の音」と言うパラドクスは、まさに茶の湯の音ではないだろうかと、茶を習いはじめた頃に感じたことがあった。静寂を旨とする茶の湯とそこにある意味あるさまざまな音、「沈黙の音」を手がかりに茶の湯の音についてまとめてみた。

・音に心を託す
・客人が立てる音、心遣いの音
・点前の音、持て成しの心
・静けさの音、癒しの音
・「沈黙」というコミュニケーションのために

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音に心を託す

 茶の湯では、「音を立ててはいけない」ということがことさら強調される。このために「静かにしていなければと思うと、それだけで尻込みしてしまう、緊張する」など、漠然とした先入観で不安を抱える人は多いではないだろか。
もちろんむやみに音を立てるのは一般的なマーナーとしても慎むべきだが、「音を立ててはいけない」というのは単なる思い込みである。逆に「音を意識して立てる」のが茶の湯であるといえる。
 癒しや和み、刺激などの音が持つ心への働きかけを巧み取り込み、これを効果的に用いているのである。

 茶会に招かれた客人が立てる音、お茶を点てるときの音(点前中の音)、茶庭(露地)から聞こえる水音など、そのすべての音が程よく調和して、茶の湯の趣き「茶趣」といわれる独特な世界観を創り出している。
 もしそこに音がなければ、またそこに私たちが音を聞こうとしなければ、茶会はとても味気ないものになってしまうだろう。

 音に人の心を感じ、音に自然を見る……、普段の生活では、あまり気にしていない「音」を意識することで、茶の湯の世界とその楽しみ方が大きく広がるはずである。


客人が立てる音、心遣いの音

 客人は、打ち水で清められた露地を通り抜け茶室へと向かう。茶室の入り口(にじり口)の戸を開け、身をかがめるようにして中へと入る。最後の客人は、にじり口の戸をピシッと音を立てて閉める。これは茶室に入り終えたことを同席の方々と主人(亭主)に知らせるための合図でもある。
 さらに茶室の中ではサッサッと畳をする歩き方(摺り足)で、あえて音を立てることが要求される。それは席中に程よい緊張と静寂を同時に感じさせる音でもある。亭主はその音を聞きながら茶室の中の様子を察する。
 摺り足の音が聞こえなくなると、茶道口の戸が開き亭主が現れる。無言の中で座が開かれる何ともいえない茶の湯の風情を感じさせてくれる場面である。
 また、出された茶を飲む時は、最後に吸い切りといって亭主の心づくしを頂くという意味を込め、ズーッという音を立て飲み干す。

 そこに一切言葉は無く、阿吽の呼吸ともいうべき所作(動作)の音のみでコミュニケーションが図られていく。茶会に招かれた客人は亭主に対する「心遣い」を音に託すことで、茶会を亭主と共に創り上げていくのである。


点前の音、持て成しの心

茶の湯には「三音」といって、茶を点てる時の心得がある。

 「釜の蓋を切る(づらす)音、茶筅通しの音、茶杓を茶碗の縁で打つ音、あるいは釜の煮える音、湯水を汲み入れる音、残りを釜に返す音。この三音の他には音を立てないことが茶席の心得とされる。」とある。
 言い換えれば、この三音は必ず音を立てなければならないということになる。しかも心得とあるからには、茶を点てる中での重要な節目で、何かしらの意味を持っているということでもある。

濃い茶点前,稽古
 この三音の中にある茶筅通しの音とは、茶筅を三度茶碗の縁に軽く当てる所作で、真言密教の浄めの礼儀といわれる灑水(しゃすい)に由来したと伝えられており、火、水、風の塵を払うという意味が込められているそうである。故にその意図に合った音を立てることを心掛けなければない、といっても、それはとても難しい。
 しかし、客人のために全てを整えて心のこもったお茶を点てる、その心を音で現すと捉えてはどうだろうか。一期一会の清らかな一碗を点てる「約束の音」として、まずは自分の心の中で響くように。

 点前の節目節目の音、その全てが、持て成しの心を届ける音として大切に扱いたいものである。

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 茶の湯の音-2静けさの音、癒しの音
 「沈黙」というコミュニケーションのために

2011年3月 記 佐藤 宗雄 So-U

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