茶の湯で用いる茶碗や茶入れ、香合、茶杓などの茶器は、季節感だけではなく亭主の思いを表すための道具であり、茶席のしつらえにおいてそれぞれに重要な役割を持っている。
招いた客人とのつながりであったり、感性のコミュニケーションであったりもする。
そこで、自分なりの茶の湯への思いや考えを、カタチにしたいと考え茶器づくりをはじめた。さらには知人の現代美術のアーティストに思いやイメージを伝え形にするなどもしている。
ここでは、抹茶茶碗や水指など主な茶器、茶道具の茶の湯における意味合いを整理し、現代における茶器の在り方を探る。
裏千家 茶の湯 己月会主宰 佐藤 宗雄(サトウソウユウ)sato So-U
Tea of Mind 水指(みずさし)
水指は、茶の湯の点前で用いる水桶のこと。
金物をはじめ磁器、陶器、塗(漆)、木地、ガラス製などのものがあり、口の広いもの、細長いものなど形状もさまざまである。
また、生活雑器の手桶や壷や瓶などを水指に見立て、用いることもある。
銘:己月 kogestu 2010年 So-U作
雲間から 常ならざると 照らす月
季節や点前、道具の取り合わせによって使い分けられる水指、 中でも利休好みの南蛮芋頭水指(なんばんいもがしらみずさし:桃山時代にインドシナから輸入された壷)や大きなひびのある名物水指「破れ袋」は、特に有名である。
水指は、点前に入るときに運び出し、終わったときに片付ける「運び」と、点前の前に、据えておく「置き」に別れる。 流派によっては、季節や点前で水指の材質や形状などが決まっている場合があるで注意を。
茶の湯において、「水」がその根本であると捉えるならば、この水を点前座に運び出す(または点前座に据えておく)水指は、点前に込められた思いを表すことはもちろん、茶席全体の趣を決定する重要な茶道具であるといえる。
侘びなのか、雅なのか、はたまた綺麗寂なのか、異端なのか....、それらは据えられた水指から波紋のように茶席全体に伝わっていく。
また、今日の生活では、壷や桶に水を溜めおいて使うことはなくなったが、限られた水を大切に扱うという日本人の「暮らしの智慧としての器」を水指に見ることができる。
エコ的な暮らしを今に伝えてくれるのも茶の湯の道具の素晴らしさでもある。
方丈の水指 銘:雲水 unsui 2012年 So-U作
置き水指 銘:壺中 kochuu 2016年 So-U作
茶の湯 二十四節気 学びのハンドブック |