長月 四季の茶 茶と季節、そのしつらえを通して茶の湯の基本とさまざまな日本文化との関わりを知り、そして薄茶の点前を習得し茶事を体験します。己月会オリジナルの初心者のためのプログラム「茶楽」。

九月/長月の茶

九月の別の呼び名、長月の由来は「夜長月(よながつき)」からとの説が一般的です。他に、菊月(きくづき)や紅葉月(もみじづき)とも。
九月は残暑が特に厳しく感じますが、野山では菊花が咲き、モミジは種を落とし葉の色づきを静かに待つ、移りの月です。
9月9日は菊の節句、五節句の一つ「重陽(ちょうよう)」。あまり一般的ではありませんが、長寿を願って菊の花を飾り菊の花びらの入った酒を頂きます。

屏風
二十四節気(にじゅうしせっき)では、朝夕のわずかな涼しさの中で秋草の先に露が結ぶ9月7日頃を「白露(はくろ)」といいます。この秋を白と表すのは中国の陰陽五行思想に基づくもの。9月23日頃は、「秋分(しゅうぶん)」。ご存知の通り、秋分は春分と同じく昼夜の長さがほぼ同じになり、彼岸の中日には大陽が真西に沈みます。仏教ではこの西方の彼方に極楽浄土があると考えられ、夕日を拝む風習が生まれました。

茶の湯は仏教とともに渡来し、特に禅宗と深い関係があります。この時期、茶の湯の成り立ちに思いを馳せ、心のための一服を点ててみてはいかがだろうか。祈りや感謝という「穏やかなこころ」と出会うために。


長月の点前
常の稽古では、礼儀作法や点前を覚えることのみにとらわれがちですが、茶の湯には、露地を清め、茶室に花を生け、炉に香を焚き、茶を点て、客に出すという一連の流れがあります。
今日のための花を選んで生け、香で清め、相手のために心を込めて一服の茶を出す...。茶の湯の全体像に思いを巡らせるだけで、稽古への取り組みも変わってきます。

花を拝見するから生けるへ、香を嗅ぐから香を焚くへなど、能動的な意識へと広げることで、花も香も、点てる茶もいつもと違うものになります。そして生けられた花に生けた人のこころを見、香の匂いの奥深さに近づくことができるのではないかと思います。

香炉

茶楽 其ノ六
茶の湯と香

祈りの香から茶の湯の香へ

現代では香りの効能や効用が科学的にも知られるようになり、フレグランスやアロマとして生活に取り入れ心身のリラックスために利用するようになりました。茶の湯でよく用いる香木の白檀は、アロマでもポピュラーなサンダルウッド(sandalwood)で、鎮静や消毒効果があることが知られていいます。

茶会を訪れると仄に漂う香の香りが、ゆったりとした時間の流れを感じさせてくれます。待ち合いの香、茶室の香、点前の中の香など茶の湯では香をさまざまに用いています。また、風炉には香木の清々しさを、炉では練り香の柔らかな香りをという具合に香りによる季節のしつらえをも楽しませてくれます。古くは、袖香炉といわれる球形の特殊な香炉を亭主がを懐に入れ、露地で客に手渡したりすることも行われていました。このように香は茶の湯の趣には欠かせないもののひとつです。

しかし、茶のことを考えれば、茶の香りそのものがとても重要な要素であるにも関わらず、何故に茶室に香を炊くのかという疑問が生じてきます。その理由の一つとして席中を浄め、炭の臭いを消すためとされていますが、はたしてそれだけなのでしょうか。また、茶の湯の成り立ちが仏教と深い関係があるからとも。しかし仏教ではその煙が不浄を払い心を清浄にするとされ、天とつながる煙がとても大切とされていました。
では、茶の湯は香りだけをどのように取り込んできたのでしょうか。

茶の湯には香道の聞香が組み込まれた且座(しゃざ)という点前があります。香を空間演出や知的な趣向としてとらえると、そこに見えてくるのが仏教と離れて独自の形成をたどった貴族の遊芸の文化、香道という世界です。
わび茶を体系化した武野紹鴎、紹鴎の連歌の師とも伝えられる香道の御家流始祖 三條西実隆。この二人の関係からも、当時の貴族の嗜まれていた香りの遊芸=香道を取り入れたのではないかと考えられます。この点については「茶の湯の香」としてまとめるつもりです。そのときにまた、詳しく。

このように茶の湯を入り口として「香道」という日本独自の文化に触れることができるのもの茶の湯の魅力です。


■九月の稽古
  薄茶を点てる
  中有風露香(なかに ふうろの かおり あり)
  行いや言葉に込められた心、その心には、香のかおりがただようように人柄を感じるもの。
  心の在り方、心くばりの大切さを表した禅語。

  話:茶の湯の香について
  1.相手を思うということ
  2.相手のために茶を点てる
  3.水屋での心得

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茶の湯小習い指導 己月会主宰:佐藤 宗雄(裏千家 助教授)
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